キリンビバレッジの缶コーヒー「FIRE」が100万本無料サンプリングのキャンペーンを行っています。サンプリング(試食や試飲、試供品など無料サンプルの配布)は広告宣伝や販売促進の常套手段です。しかし100万本というとえらく販促費をはりこんだものだと思ってしまいます。
しかし昨日触れた恵方巻きの価格戦略と同様に、じつは安上がりに運用されていることがうかがわれます。
まず100万本というと、それだけで相当の費用に思われます。でも自販機で130円の缶コーヒーの工場原価はせいぜい3割ていどではないでしょうか。だとすれば40円ほどです。だからサンプルの費用は40円×100万本=4000万円ていどと推測されます。
原料や資材の仕入れにスケールメリットが出るうえに、工場の稼働率を上げられるので、ひょっとするともっと原価が下がるかもしれません。
そしてサンプリングの方法ですが、これも費用を抑えるために省力化が図られています。サンプリングは以下のAからDの手段で行われます。
A.全国各都市でのサンプリング
B.17万名様大試飲キャンペーン!でのサンプリング
C.アンバサダー5,000名大募集!でのサンプリング
D.「つぶやくだけで!あなたも、お友達も!!FIRE 1ケースずつ(185g缶×30本)もらえちゃう!キャンペーン」
Aの全国の都市でのサンプリングは、東京なら「有楽町駅前広場」、大阪なら「とんぼりリバーウォーク」と全国9都市で行われますが、これは無料自販機を日替わりで設置して、なくなりしだい終了というものです。
自販機のレンタル代・運搬費・設置費はかかるでしょうが、人件費を大幅に抑えられます。しかも同時ではなく日替わりなので自販機の台数もさほど必要ないでしょう。
Bの17万名については、キリンのウェブ会員に登録して応募します。そして引き換えはローソンなどのコンビニエンスストアで行います。これもコンビニに委託してしまうことで人件費は必要ありません。
おそらくコンビニに販促費として値引きしたりバックマージンなどを払っているでしょうが、逆にFIREの対象商品を棚に陳列してもらえるメリットがあります。通常商品と兼ねることで物流費まで浮くのです。
Cのアンバサダーについては、キリンのウェブ会員に登録して応募します。これは配送料がかかりますが、職場など向けに3ケース単位とすることで効率よく職域の多くの人に配布してもらえるのです。
Dのツイッターについては、ツイッターで指定のハッシュタグをつぶやくと抽選であたります。これも配送料がかかりますが、ケース単位なので家族や知り合いに配布してもらえるので効率よくサンプリングできます。
テレビなどマス広告も打っていますが、これのすごいところはインターネットでバズることやダイレクトマーケティングのための名簿集めも意識していることです。
Aは繁華街に無料の自販機が登場すると、twitterやfacebook、instagramで拡散する人が出てくるでしょう。Dのツイッターも、つぶやいてもらうことでバズるはずです。
またBのコンビニ引き換えもCの職場への配送もキリンのウェブ会員サービス「My KIRIN」に登録します。これにより大量の名簿を集められ、将来的にメルマガやDMで効率よくダイレクトマーケティングを打てるのです。
100万本と聞くと驚きますが意外に安上がりで、広告宣伝・販売促進としてはインターネット時代ならではの高等戦略なのです。
ご参考
http://www.kirin.co.jp/products/softdrink/fire/campaign/
http://www.kirin.co.jp/company/news/2017/0126_03.html