デフレデフレというけれど、本当に日本はデフレ経済なのでしょうか。
半導体不足、温暖化、人手不足、中国などとの買い負けや、円安の影響もあって物価は上がっているように思います。ガソリン、食べ物、パソコン、クルマ、牛丼‥プチインフレと言っても過言ではありません。
茨木広告宣伝舎の本業である通販でも、ここ数年仕入原価が上がる商品が増えています。今年に入って加速しているように思います。販売価格に転嫁せざるを得ないので、価格設定は非常に苦慮するところです。
一方でコロナ禍によって、需要が減って価格が下落しているものもあります。そのひとつがお米です。通常は作柄で価格が変動するのですが、コロナ禍は価格形成メカニズムすら変えてしまってるのです。
最高級品とされる魚沼産のコシヒカリは横ばいらしいのですが、外食需要が落ち込むことで国産コシヒカリなどは大きく下げているようです。
最近もてはやされている銘柄米も、その例外ではありません。麻生太郎さんによれば、温暖化でおいしくなった北海道米も値段が下がっています。
ブランディング的に、せっかくブランド化した銘柄米の価格を下げるのは得策ではありません。それをうまく処理しているお米がありました。
「ななつぼし」です。「マツコのお福分け新米増量」というキャンペーンを打ち出しました。
消費者的にはお買い得感しかありませんが、実は価格が下がった分の量を増やして、価格を維持しようとしているだけです。
「新米増量」というのも巧い言い方で、なんとなく期間限定感が出ています。来シーズンになって価格が戻れば、しれっと増量をやめられるのです。
「お福分け」という表現も、じつはコンプライアンス的に絶妙です。「おすそわけ」だと、売り手が自らの利益を削っている感があります。
実際には価格が下がっているので、売り手が利益を削っているわけではありません。だから「おすそわけ」では、景表法における優良誤認になる可能性があるのです。
「お福分け」なら、価格が下がったという(消費者にとっての)利益を還元しているというニュアンスがビンビン伝わってくるのです。
とにもかくにも、価格を下げるのではなく量を増やすことで、ブランドの価値を維持しているのです。しかも期間限定感を打ち出すことで、今後価格が上昇すれば元に戻せるようにしているのです。
どこの代理店の戦略なのかわかりませんが、お見事というしかありません。