百貨店の三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長が今月末付で社長を辞任すると日本経済新聞が報じました。石塚邦彦会長は留任するということで大西氏が会長になるということなく代表権も返上すると思われます。
しかも後任は未定という異例な退陣劇にクーデター説も取り沙汰されています。
三越伊勢丹ホールディングス側は報道を否定した上で、明日(3月7日)の取締役会で異動を決議する予定だというなんとも思わせぶりな発表をしたようです。
伊勢丹出身の社長が辞任に追い込まれ、三越出身の会長は留任するというところに、統合した会社の力関係の変化があるように思います。
バブル崩壊後業界を牽引してきた伊勢丹は、かつての業界の雄・三越を飲みこみました。そして伊勢丹主導で統合と同化を進めてきました。
しかし、業界の衰退の流れの中で成果を出せなかったために責任を取ることに追い込まれたように見えます。
正直なところここ最近の業績は業界平均よりも苦戦はしているものの、リーマンショック後の落ち込み比べればはるかに踏ん張っているといえます。
それでも経営責任を問われたのは、やはり伊勢丹が業界に対してアンダーパフォームになってしまったからだと思います。
つまり伊勢丹の神通力が落ちてしまったのです。そしてその引き金を引いたのが大西氏だということになったでしょう。
本当に神通力が落ちたのかはわかりません。ここまでが好調だった反動かもしれません。ただ、そう見られること自体がブランドの毀損であり、顧客や取引先に対する、これまでの求心力も一気に失われる可能性があります。
こうなった原因はさまざまでしょう。簡単にわかれば百貨店業界が苦戦するはずがありません。通販業の立場から敢えてひとつだけ理由を挙げると、通販の対応が後手にまわったことがあります。
三越は比較的通販に熱心でした。テレビ東京の午後4時台の「レディス4」(現在の「L4」)広告枠を買い取ってテレビ通販を積極展開してきました。
余談ですが、かつて司会をつとめていた故・高崎一郎氏が三越と組んだのが始まりです。高崎氏はもともとニッポン放送の出身で、フジ・サンケイグループのメディア通販の生みの親でもあり、日本のメディア通販の先駆けでした。
ところがこのレディス4がこの3月で終了することが決まっています。
おそらく三越と伊勢丹が経営統合していなければ、この番組は存続していたでしょう。もともと伊勢丹は通販に消極的でした。
伊勢丹は店頭に重きを置く会社です。エース級の人材は営業部門に置きたがります。通販もどちらかといえば日陰者扱いでした。
だから今世紀以降の通販市場の爆発的拡大に乗り遅れたと思われます。通販にも強い三越と統合したにもかかわらず、そのリソースを生かしきれなかったのです。
伊勢丹と三越のブランドでインターネット通販に力を入れていれば、ZOZOTOWNやSHOPLISTは生まれなかったかもしれません。
伊勢丹の神通力が落ちたところで、通販に乗り出しても、もう挽回はできないかもしれません。大変もったないことをしたと悔やまれます。