数日前の日本経済新聞1面に、楽天トラベルが無断解約防止システムを導入するという記事がありました。
旅行業界や飲食業界では、予約をしておきながら実際には利用しない客が増えているそうです。姿を見せない、つまり「No show(ノーショー)」という事件です。
個人的にこの言葉を知ったのは、石ノ森章太郎さんの「HOTEL」という漫画を読んでいたときです。じつにさまざまな事件の起こるホテルで、その一部として取り上げられていましたが、実際にはかなり多いようです。
とくにネット予約でその件数が増えているようです。直接予約するので現地支払の比率が増えている上に、電話と違って人間を介在しないから、罪悪感なくブッチしやすいのです。
ノーショーは、押さえていた場所が無駄になって機会ロスが生まれるだけではなく、用意した食材が無駄になるという直接的損害があります。さらには、予約システムの手数料や、受け入れ準備にかかる人件費など、大小さまざまな損害が生まれます。
そこで楽天トラベルは、AIなどを活用してリスクの高そうな予約パターンをあぶり出し、該当する予約には電話確認などを行うようです。実に素晴らしいシステムです。
茨木広告宣伝舎でも再三訴えてきましたが、通販業界でも受取拒否に悩まされています。注文しておきながら、代金引換の商品の受取りを拒否するのです。
通常、倉庫を出た荷物について、どのような扱いをされているかわからないので、その商品をそのまま他に回すことはしません。
だから受け取られなかった商品はそのままゴミになります。
さらには配達するための運賃、代引手数料(受取拒否でも代引手数料は取られるのです!)、受注にかかる人件費(電話受注なら最低500円くらいはかかります)、フリーダイヤル料金、梱包代、さらには返品の送料もかかるのです。
AIは使わなくても、いちどでも受取拒否をしたひとはブラックリスト入りしてその後受注は断ります。それでも電話してくる輩もいます。
さらには怪しいパターンはある、正確にいうと、業態によってはハイリスクの顧客ばかりなので、はね出すこともままなりません。
ただクレジットカードの不正利用は、名前(たいていある国の名前です)や届け先(大都市圏の外れ、たとえば八王子の駅から遠い辺鄙な場所)であぶり出せます。危なそうと思ったら出荷を保留すれば、数日後にほぼ100%カード会社から連絡があります。
クレジットカードもチャージバックといって不正利用には、利用料金が振り込まれないことがあるのです。
こうしたノーショーや受取拒否のような事件について、多くの事業者が、予めリスクを織り込んで経営していることがほとんどです。
しかしこうした経営は本来正しくありません。一部の不届き者の損害を、他のまっとうな顧客に転嫁しているということだからです。だからこそ、事業者は不届き者には、最後まで請求を行うべきです。
茨木広告宣伝舎の運営する通販では、受取拒否はすべて後日書状付きで請求書を発行します。
書状には電話注文の時点で有効に売買契約が成立していること、特商法にもとづき返品できないことを伝えていることなどを明記し、請求金額を振り込むように求めます。
さらには受け取るつもりがないのに注文するのは偽計業務妨害であり、犯罪だということも明記します。さきほどから「事件」と書いているのは、犯罪だからです。
こうした書状を受け取ると、消費生活センターなどに駆け込むひともいます。センターから問い合わせがあっても、経緯を説明すると納得してもらえて、きちんと不届き者には「支払い義務がある」と説得してくれます。
ただでさえ損害が発生していて、さらに人件費や郵便代をかけて請求するのは、損害の上塗りかもしれません。でも、まっとうな顧客に損害を転嫁しないためにも、請求書を発行し続けるべきだと思います。
すべての事業者が、ノーショーや受取拒否に毅然たる対応をとれば、かなり「事件」は減るはずです。
楽天トラベルのような予防策も素晴らしいことですが、事後の対応も重要だと思うのです。