TBS系のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』が社会現象になっています。最終回はリアルタイム視聴率が20%を超え、「逃げ恥ロス」なることばまで生まれました。そして新垣結衣さんは星野源さんつながり?で紅白の審査員に選ばれるまでに。
すでに多くのネット関連の評論家の人々がネットがテレビ視聴に影響を与えたという分析をしていますが、べつに「逃げ恥」に始まったことではありません。NHKの朝ドラ『あまちゃん』もtwitterで実況しながら視ている人はたくさんいましたし、以前から2ちゃんねるでもテレビ実況が盛り上がっています。
こうした「ソーシャル視聴」の流れよりも注目すべきはやはり「恋ダンス」の力です。ソーシャル視聴はすでに視ている人がより盛り上がるもので視聴者を劇的に増やす効果はさほどなかったかもしれません。
もちろん知り合いやフォローしている人のツイートなどをみて視るようになるというのはあったかもしれません。しかし「恋ダンス」の吸引力は桁違いだったように思います。みんなが「#踊ってみた」とオマージュ動画をYouTubeにアップしたことが、ふだんテレビドラマを視ない層もひきつけたような気がします。
ドラマのエンディングで出演者が踊るのはフジテレビ系の『マルモのおきて』などの前例もあり、さほど目新しいことではありません。また「#踊ってみた」的な動きもAKB48の『恋するフォーチュンクッキー』という前例があります。もし当時YouTubeがあればモーニング娘。の『LOVEマシーン』もそうなっていたと思われます。
今回はドラマのエンディングだったこと、「#踊ってみた」とYouTubeにアップする動きが重なったことがこの効果を生んだのではないでしょうか。
付記するなら、オリジナルが出演者総出で踊っているのでオマージュでも大勢で踊るということが商店街とか果てはアメリカ大使館まで、いろんな人が参加することにつながってバズりやすかったもしれません。Pharrell Williams(ファレル・ウイリアムス)の「Happy」の「踊ってみた」にもその傾向を感じます。
こうしたオマージュ動画につきものの「#踊ってみた」というハッシュタグには、「踊った」よりも少し「照れ」を感じます。そしてYouTubeなどの動画共有サイトに上げるにあたって見知らぬ人などから「へたくそ!」とか、「かわいくない」などと酷評されても、「ちょっと踊ってみただけなんだからねっっ!」という予防線を張っているのです。
「#踊ってみた」はちょっと冷めてる風を装ってはいますが、実はノリノリなのです。そのノリは、一種の「ええじゃないか」にも通じるお祭りとか下手をすると集団ヒステリーにもなりかねない参加意識や高揚感です。その参加意識や高揚感が「恋ダンス」の発信源となったドラマ視聴にも波及したのではないでしょうか。
ここにウェブプロモーション(インターネットを活用した販売促進)やインターネット集客のヒントがあるように思います。ストレートなメッセージを発信するよりも、ダンスでなくても受け手が自分でもやってみてアップしたくなる何かを発信することがプロモーションになるかもしれないのです。